令和六年小雪号
2024年11月22日公開
今月の初め、アメリカの大統領選挙が実施されました。
当初は大接戦が予想され、票が確定するまで数日かかる、と言われていましたが、蓋を開ければドナルド・トランプ前大統領が即日当確の圧勝に終わり、来年1月に第47代大統領に就任することが決まりました。
さて、アメリカ大統領は、初代ワシントン大統領から現職のバイデン大統領(第46代)まで45人が就任しています。そのうち、日本でもおなじみの3人を選び、それが感じられる首都圏の場所はないか、探してきました。
①初代 ジョージ・ワシントン
「ワシントン」と聞いて思い浮かんだのは、東京・銀座にある老舗の高級靴店、「ワシントン靴店」ですかね〜。
カリグラフィ風の「W」のマークもステキです。
「ワシントン靴店」の屋号は、一見すると、大統領とは無関係に、海外のハイカラなイメージで勝手に名付けられたのでは、と思ってしまいますが、実はきちんとした由来があるのです。
創業者は長野県南安曇郡東穂高村(今の安曇野市)出身の東條たかし(「たかし」の漢字は、偏が「舟」、旁が「壽」)という人で、明治39年、18歳のときにアメリカのオレゴン州ポートランド市に単身渡米し、食料品店を開いたそうです。
この食料品店は、ワシントン街にあったことから、「ワシントン・グローセリー」という屋号だったそうです。
その後帰国し、昭和8年、45歳の時に、日本人にも欧米のような靴文化を広めたいと、銀座に靴店を開きました。そして、その靴店の屋号に、ポートランド時代の初心を忘れないようにと、食料品店と同じ「ワシントン」の名を冠したそうなんです。
ポートランド市のワシントン街の名は、初代大統領に由来していますので、ワシントン靴店の店名も、間接的にワシントン大統領と繋がりがあった、ということがわかりました。
②第16代 エイブラハム・リンカーン
リンカーン大統領といえば、ゲティスバーグ演説や奴隷解放宣言で知られ、日本の教科書にも登場する有名な大統領ですが、「リンカーン」と言うのは、私のような昭和の人間のようです。
文部科学省の国語審議会が発表した「外来語の表記」では「リンカーン」と表記すると定められ、私が中学生や高校生の時の教科書にもそう表記されていましたが、現在の教科書のほとんどは「リンカン大統領」と表記されているそうです。
英語の発音では「リンカン」が近いらしく、教科書ではそちらが採用されているようです。
「リンカン」と聞くと、やっぱり(?)「中央林間駅」を思い出してしまいます。
中央林間駅は東急・田園都市線の終点で、田園都市線はほとんどが東京メトロ・半蔵門線や東武スカイツリーライン(伊勢崎線)に乗り入れていますから、首都圏にお住まいの多くの方にとって、おなじみの駅名だと思います。
渋谷駅で出発を待つ、東急・田園都市線の中央林間行き電車です。
終点の中央林間駅は、神奈川県大和市に所在しています。
田園都市線の中央林間駅は、小田急江ノ島線の中央林間駅に接続していて、乗り換えることができました。
前述の通り、中央林間駅は田園都市線の終着駅としての知名度がありますが、実は、小田急の駅の方が開業はずっと古いのです。
田園都市線は徐々に延伸されてきた、という歴史があり、中央林間駅まで延伸開業したのは1984年なんです。
一方の、小田急の中央林間駅は、なんと、昭和4年に「中央林間都市駅」として開業しました。
戦前にしては、なかなかユニークでハイカラな駅名ですよね。どういう由来があるのでしょうか?
19世紀にイギリスのエベネザー・ハワードという人が、「ガーデンシティー構想」という都市計画の理念を提唱します。これは、大都市の劣悪な環境を避け、大都市に近い郊外に自然豊かな住宅都市を造って、大都市への通勤の利便性を保ちつつ、快適な住環境で暮らす、といったような考え方です。
この理念は日本にも影響を与え、大阪の阪急電鉄や東京の東急電鉄の前進の会社が、郊外の宅地開発を進めました。田園都市線の名称も、「ガーデンシティー」を和訳したものです。
そして、小田急電鉄もそれに触発され、江ノ島線沿線に林間都市構想を計画し、宅地造成を行いました。当時は雑木林が広がる地域に造られたので、「林間都市」と名付けられたのです。
そして、林間都市には中央林間都市駅を中心に、東林間都市駅、南林間都市駅の3つの駅が設けられました。それらの駅名はのちに「都市」が省略されて現在に至ります。
南林間駅の様子です。
中央林間駅と南林間駅は神奈川県大和市に所在していますが、東林間駅は神奈川県相模原市(南区)に所在しています。
と、ここまで長々と説明してきましたが、ここまで読んでいただいた方の中には「リンカン大統領」と「林間都市」の音が似てるのはわかるけど、頭に「中央」とか「東」とか「南」とか付いてるじゃん、と思われた方もいらっしゃると思います。
大和市には中央林間や南林間という住所もあるのですが、何もつかない「林間」という住所もあるんです。リンカン大統領が16代、ということで、1丁目16番地の看板を撮りました!
③第40代 ロナルド・レーガン
レーガン大統領は、もともとハリウッドの映画俳優でしたが政治家に転身。1967〜75年までカリフォルニア州知事を務め、また、1980年の大統領選に当選し、2期8年を務めました。
日本語では「レーガン」と表記されますが、英語ではいわゆる二重母音で「レイガン」と発音するみたいですね。
ということで(?)、東京都中央区の亀島川にかかる「霊岸橋」に行きました。
「霊岸橋」の読み方は、もちろん「れいがんばし」です!
霊岸橋は、東京メトロの茅場町駅のすぐ近くにある、永代通りの橋です。
茅場町の対岸地域は、江戸時代は「霊岸島」と呼ばれていました。ここに「霊巌寺」というお寺があったからです。
このお寺は、浄土宗の高僧である雄誉霊巌上人が開き、関東十八檀林の一つに数えられています。明暦の大火で焼失したため、隅田川の対岸に移転し、現在も江東区白河に所在しています。
読み方は「れいがんじ」ですが、どうして地名の方は「霊岸」という漢字になったのかよくわかりません。もしかしたら「巌」の字が難しかったからかもしれませんね。
いずれにしても、霊岸島へ渡る橋、ということで、今でも「霊岸橋」という名称になっているんです。
霊岸橋がかかる亀島川は、日本橋川から分かれ、隅田川に合流する全長1kmほどの短い河川です。霊岸橋は最初に架かる橋で、橋の近くには巨大な水門があって、高潮時には川の水を堰き止めて、亀島川が氾濫しないようにしています。
水門は、来年2月まで、耐震補強工事を行っていました。